亀田製菓株式会社
戸田亮さん(仮名・経営企画) 44歳
新潟で見つけた、海外経験を活かして世界で勝負できるフィールド。
新卒で就職してから40歳まで、大手警備会社の経理・財務畑で活躍していた戸田さん。東京本社の経理部等でキャリアを積んだ後、北欧のグループ会社へ取締役として出向、海外の関連会社を飛び回って手腕を振るっていた。
そんな戸田さんが海外生活を経て、東京へ戻って感じたのは、仕事と暮らし、両面にわたる「窮屈さ」だったという。
夫婦で話し合い、帰国して1年後には妻の実家がある新潟への転職活動をスタート。志望企業に自らを売り込み、転職に成功した。
自然が豊かな新潟で理想の暮らしを実現しつつ、「経営者になりたい」という夢に着々と前進している戸田さんに、転職成功のポイントと新潟の魅力を伺った。
※本記事の内容は、2020年1月取材時点の情報に基づき構成しています。
- 過去の
転職回数 - 1回
- 活動期間
- エントリーから内定まで49日間
転職前
- 業種
- サービス業
- 職種
- 経理、財務
- 業務内容
- 上場企業での経理、財務、経理システム導入プロジェクト、海外子会社管理、海外子会社の財務担当役員、新規ビジネス企画プロジェクト
転職後
- 業種
- 食品メーカー
- 職種
- 経営企画部マネージャー
- 業務内容
- 経営トップの参謀役として、他社との事業提携企画、国内外子会社の財務やサプライチェーンの再構築、PMI等
海外から東京に戻って感じたのは、仕事と暮らし、両面にわたる「窮屈さ」。
現在のお仕事はどんな内容ですか?
「柿の種」や「ハッピーターン」でおなじみの亀田製菓で、経営企画部のマネージャーを任されています。経営トップの参謀役として、他社との事業提携企画、国内外子会社の財務やサプライチェーンの再構築、 PMI(M&A後の統合効果を最大化するための統合プロセス)などに取り組んでいます。
入社前のご経歴を教えてください。
大阪の大学を卒業後、40歳まで東京の大手警備会社で働いていました。最初の1年間だけ警備の現場を経験した後、経理部へ異動。その後ERPや内部統制導入プロジェクト、戦略企画の立案などに携わりました。
さらに、北欧にあるグループ会社へ出向。取締役として、財務体質の革新や取締役会の活性化を通じた計画経営の導入などを主導しました。その実績が認められて、海外関連会社のプロジェクト資金管理も手掛け、EU統括会社の財務責任者も兼任しました。そして3年後に東京本社に帰任、新規事業企画と立ち上げに携わりました。
転職のきっかけは?
いくつかありますが、まず1つは、自分の目標が見つかったことです。それは「いつかCFOになって、世界で勝負してみたい」ということ。若い頃から漠然と夢は持っていたのですが、北欧の会社で取締役を経験し、あらためて「経営をやってみたい」と考えるようになりました。
しかし、出向から戻ってきた本社は従業員が2万人を超える大企業。資金も潤沢にあるぶん、財務が手腕を発揮できる場面は少なく、新しいこともやりにくい状況でした。
もう1つのきっかけは、妻が新潟出身だったことです。北欧へは夫婦で赴任し、森と湖に囲まれた、とてものどかな環境で暮らしていたので、東京に帰ったとたん、一気に窮屈に感じてしまいました。
「やはり、緑のあるところで暮らしたいね」と話すようになり、帰国して半年後には、新潟への移住を前提にした転職活動を始めていました。
転職活動はどのように進めましたか?
まずはネットで情報を探しました。大手を含むいくつかの転職エージェントのほか、新潟に密着しているリージョナルキャリア新潟にもエントリーしました。ちょうど、リージョナルキャリア新潟が主催するU・Iターンセミナーが東京で開かれると知り、妻と二人で参加しました。
その場で何社か紹介してもらったのですが、給与水準で納得できる求人がなく、海外とも接点がない会社ばかりだったので、私の方から「亀田製菓さんに紹介してもらえないだろうか?」と頼んでみたのです。すぐにコンサルタントが会社に掛け合ってくれ、先方の総務部長から「会ってみたい」というお返事をいただき、面接を受けることになりました。
面接には、会社の中期計画やP/L(損益計算書)などを、あらかじめホームページで確認してから臨みました。会社が現在抱えている課題と、それに対して自分に何ができるのか、という話題になったのですが、海外への販路拡大計画が人材不足で思うように進んでいない、ということでしたので、私のヨーロッパでの業務経験を活かせるのではないか、ということを話しました。
もともとは2回面接がある予定でしたが、1回目の面接のあと「すぐに来てほしい」という話になり、入社が決まりました。
今の会社に決めたポイントは?
実は並行して、大手のエージェントから自動車会社を紹介されていました。しかし、勤務地が首都圏だったため「収入は上がるけれど、また都会で暮らすのか?」と考えると、決断できませんでした。
一方の亀田製菓社は、新潟にありながら、世界に打って出ています。私自身、海外で暮らしていたときに、無性にせんべいが食べたくなったことがありました(笑)。その経験から、米菓は世界市場でポテンシャルがあると思いましたし、会社規模も出向していた企業と同じくらいでちょうどいいと感じました。
それともう1つは、亀田製菓の本社は新潟市にあるので、妻の実家から近いということも決め手になりました。
トップのパートナーとして働くやりがい。美しい四季に囲まれて暮らす喜び。
転職していかがですか?
入社後は経理部のアシスタントマネージャーからスタートしました。まもなくアメリカにある子会社の財務・ERPシステムの立て直しを任され、アメリカと日本を行ったり来たりする生活になり、2年目には経理課長に昇進。決算全般を見るようになり、3年目には現在所属する経営企画部に抜擢されました。その後はタイの子会社の立て直しや、カンボジア子会社の立ち上げ、国内のM&Aなど、忙しい日々を送っています。
今の仕事は、トップから直接下りてきます。当社のトップは「会社をもっと伸ばしていきたい!」という思いが非常に強いので、求められる仕事の幅が広いですし、任される裁量も大きいので、とてもやりがいがあります。
また、マネージャーを務めるにあたって、プロパー社員の個性や考え方を尊重し、信頼関係を築く、ということを心がけています。私は問題解決のために経験者として採用されましたが、何かを変えるためにはこれまで長年働いてきた社員に対して丁寧に説明することが大切ですし、どう変えていくかというプロセスにも気を配るようにしています。
転職して良かったと思うことは?
一番は、CFOになるという目標に近い仕事をさせてもらっていることです。トップとの距離もかなり近いですし、経営手法も学べています。このまま頑張っていけば、夢を実現するチャンスがあるかもしれない。そう思える環境にいられることが、嬉しいですね。
収入面では都会と同じ水準とまではいきませんが、新潟では良い方だと感じています。また、妻の実家に近くなりましたが、子どもが生まれてからは一層良かったと感じますね。
妻の負担やストレスも少なくなるでしょうし、すごく助かっています。おじいちゃん、おばあちゃんといると、子どもの表情が豊かになりますから、この環境には大変満足しています。
公園にもよく遊びに行っていますよ。公園といっても東京と違ってすごく広いので、走りまわり放題(笑)。この環境なら、子どもものびのび育ってくれると思います。
困っていることや課題はありますか?
生活面での不便さはまったく感じません。強いて言えば、専門的なセミナーの開催や書店に専門書が少ないところでしょうか。専門書はネットで中を見ずに一発勝負で買うしかないので(笑)。
もう1つ不安があるとすると、地域の過疎化が進んでいて「子どもが大きくなった時にどうなるのだろう?」ということは感じます。だからこそ、私自身もこれから新潟の活性化に寄与していきたいという気持ちでいます。
生活面の変化はありましたか?
新潟に来て子どもが生まれたので、今は新潟市内に家を買って暮らしています。現在の通勤時間は5分くらい。東京時代は満員電車で1時間ほどかかっていたので、通勤はとても楽になりましたね。
それから、新潟に来てから、休日によく出かけるようになりました。週末は毎週のように、近場の温泉に行ったり、美味しいそばを食べに行ったりと、家族でドライブを楽しんでいます。
また自宅も会社も新潟平野に囲まれているのですが、4月は満開の桜、5月は田植え、夏になると田んぼが緑のじゅうたんになり、秋には黄金色に染まる。そして冬には、一面の雪景色。新潟は四季がはっきりしていて、一年を通じて美しい風景に囲まれているので、オフの日は心が癒されますね。
転職を考えている人にアドバイスをお願いします。
転職するにあたっては、まず会社をよく調べることをおすすめします。会社の方針と現在抱える悩みは何なのか。あとは、自分が好きになれるかどうかがポイント。好きになれなければ、その会社に長くいられないと思うからです。給与などの条件だけで選んでしまうと、壁にぶち当たった時にすぐ辞めたくなるかもしれません。
今回経験してみてわかったのですが、転職は想像より大変です。私の場合、いったんは収入が減りましたし、モチベーションの維持も大変でした。また地方企業の場合、まわりを尊重しつつ自分から輪に入って行き、事前調査に基づく的確なアドバイスを繰り返し、向こうから相談を持ち掛けてくれる関係を築く、という丁寧なアプローチが必要です。
私の場合、輪の中に溶け込めたという実感が持てるまで、半年くらいかかったと思います。でも、溶け込んでしまえば大丈夫。自分のそれまでのキャリアを存分に活かせるので、しっかりとした目的や目標があれば、地方で転職に挑戦する価値は十分にあると思いますよ。