会社は社員の幸せの集合体。働くことの本質的な意味を求めて。
株式会社栗山米菓
代表取締役社長 栗山 敏昭
1959年 新潟県生まれ。明治大学卒業。
1982年 株式会社永谷園入社。
1983年 株式会社栗山米菓入社。
1992年 代表取締役専務就任。
1995年 アメリカ国際経営大学院 (AGSIM)卒業。
1997年 代表取締役社長就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。
米菓メーカーの枠にとらわれないアイデアで、楽しいおいしさを。
栗山米菓は1947年に創業し、多くの皆さまにおいしさと楽しさをお届けしている会社です。代表商品である「ばかうけ」や「星たべよ」は、オリジナルキャラクターを打ち出しての展開に力を入れるなど、伝統菓子である米菓ジャンルにおいて、これまでの概念の枠にとらわれない挑戦を重ねてきました。
米菓という原点を大切にしながらも、自分たちの力、アイデアでその領域を広げて越えていくような、躍動感あふれる姿が当社らしさだと思っています。
最近の取り組みとしては、これまで捨てられていた「おから」や「さつまいもの皮」といった素材に、新しい価値をプラスして再生するアップサイクル商品「ろっから堂」を発売。また、コラボ商品も増えています。
吉本興業の社員食堂で人気ナンバー1メニューのカレーをイメージした「小さなばかうけ よしもとカレー風味」、人気旅行ガイドブック「ことりっぷ」とのコラボ第2弾の「旅のお供に持っていきたいばかうけ」をテーマにした商品など、それぞれご好評いただいています。
今後も菓子メーカーの枠にとらわれない形で「たのしい・おいしい・あたらしい」を提供する会社を目指していきます。
30代から経営側へ。トップとしての姿を学ぶ機会にも恵まれた。
私が栗山米菓に入社したのは大学卒業後に永谷園で営業を約1年経験してからでした。入社から数年後、栗山米菓に籍を置いた形でアメリカのアリゾナに2年間留学。戻ってからは工場勤務、販売管理、工場管理や営業の全体を見る業務に就き、30歳を過ぎたころには専務となり、37歳で社長になりました。年齢的には早い段階で経営に入ったという感じですね。
アメリカから戻った頃は年間売上が約50億円で、新発田工場が一部稼働した時期でした。現在は売上が約227億円ですから、ずいぶん成長してきたと思います。
当社では「栗山フィロソフィ」を経営の柱としていますが、これは京セラ創業者の稲盛和夫氏の教えから生まれたもので、社員がベクトルを合わせて進んでいくための指針をまとめています。稲盛氏からは経営者とはどうあるべきかを学ばせていただきました。
自分たちの行動によって周囲は変わるということを実感。
もうひとつ、会社経営に対して意識が変わったのが、1994年に会社が赤字になったときです。当時、市場開拓を狙って東京に事務所を作り、私が赴任していました。また、社長だった父は社外の社会奉仕活動に忙しくしていたため、徐々に経営のバランスが崩れていったのです。さらに、私の母が病気で倒れるなどプライベートでも大変な状況でした。
そんなときに親や周囲の人を敬う気持ちや、きちんと挨拶をするといった、毎日を前向きに過ごすための生き方の基本のようなものを重視しました。会社にはまず朝礼を取り入れましたが、そこから徐々に職場の雰囲気が良くなっていって、それに伴って業績も良くなっていきました。
行動によって周囲が変わっていくというのが世の中の仕組みなのだと思います。経営テクニックや戦略よりも、まずは自分自身がどういう生き方、考え方をするか。それがいかに大事かということだと実感しました。
社員が幸せに働いていくために必要だと思ったもの。
会社というのは社員の幸せの集合体であるべきです。「会社に行きたくないけれどお金のために働いています」という集合体では、なかなかいい会社は作れないと考えています。また、家族の問題などを抱えながら仕事していたら、仕事でもミスをするかもしれないし、幸せにはつながらないと思っています。
そこで、もし社員が家族や人との関係などに課題を抱えているなら、それを解決するためのヒントになればいいと考えて、会社で生き方、考え方の勉強会を導入しました。2001年のことです。
当初は社員から戸惑いの声が上がりましたが、紆余曲折もありながら、いまは当たり前に勉強会や社員の実践発表を定期的に開催しています。社員には幸せであってほしい、幸せに働いてほしいと思います。
出会いに素直に反応することが大事だと思う。
転職しようという方々は、仕事の内容や給料、待遇で会社を選ぶ人も多いかもしれません。ただ、それだけではなくて、紹介されたとか、私を見て栗山米菓に興味を持ったとか、そういう出会いに素直に反応することも大事だと思いますね。
私も出会いを大切にすることでいろいろな道が広がっていきました。それを損得や好き嫌いで判断してしまうことで、出会いの意味が分からなくなって、人生をもったいなくしている人がたくさんいると感じます。
何か不都合なことが起きて、「相手が悪い」と思うのは一番簡単ですが、過去と相手は変えられない。変えられるのは自分だけですから。「自分の仕事は何のためなのか」という価値基準を自分のなかで明確にすることが、社員に幸せをつかんでもらうために必要なことだと思っています。
新しい取り組みの効果もあり、需要の伸びを受けて2023年秋には新発田工場を増床し、ばかうけを製造している「ばかうけファクトリー」のライン増設を行いました。ですから、今後も採用に力を入れていきます。もちろん実務経験も重要ですが、私のインタビューを読んで当社に興味を持ってくれる方、考え方に共感してくれる方との出会いを楽しみにしています。