株式会社CSコーポレイション
今井勝さん(仮名・建築設計) 34歳
父親として、建築士として考えた「本当の幸せ」。妻の故郷・新潟で満喫するバランスのとれた暮らし。
東京から新潟へのIターン転職を果たした今井勝さん(仮名)は、東京都内の建築設計事務所でキャリアを積んだ一級建築士。アトリエ系の事務所を経て、公共施設を主に手がける事務所に8年ほど勤めていたが、待遇や仕事内容に不満はなく、やりがいのある日々を過ごしていた。
しかし第一子を授かり、自分にとって、家族にとって、何が幸せか、将来を真剣に考えるように。そこでたどり着いた結論が、妻の生まれ故郷である新潟への移住だった。不安や迷いを乗り越えて、Iターン転職で手に入れた充実の仕事と暮らしについて聞いた。
(※本記事の内容は、2018年3月取材時点の情報に基づき構成しています)
- 過去の
転職回数 - 3回
- 活動期間
- エントリーから内定まで120日間
転職前
- 業種
- 設計事務所
- 職種
- 建築意匠設計
- 業務内容
- 学校や庁舎など公共施設の建築設計・監理業務
転職後
- 業種
- 商業施設の企画・設計・施工のトータルプロデュース
- 職種
- 建築意匠設計
- 業務内容
- 設計として専門店や飲食店、保育園など各種商業施設の建築設計・監理業務に従事。
やりがいと給与水準の維持を両立できる会社は新潟にもあった
現在のお仕事はどんな内容ですか?
CSコーポレイションは、商業施設をメインに建築・内装・サインの設計・施工を行う会社で、私は主に建築の設計を担当しています。前職までのキャリアから、今のところは建物の設計がメインですが、内装にも興味があり、そちらにも新たにチャレンジしたいと考えています。
会社の営業エリアは全国に広がっており、北海道から九州まで実績があるのですが、私が担当する建築のクライアントは新潟県内がほとんどです。
入社前のご経歴を教えてください。
茨城県の高校を卒業後、神奈川県内の大学と大学院で建築を学びました。その後、都内の建築設計事務所を3社ほど経験しながら、建築の設計監理業務の経験を積みました。アトリエ系の設計事務所2社では、海外オフィスビルや集合住宅の設計業務に関わり、その後に勤めた設計事務所では官公庁管轄の建築設計業務を経験。学校や庁舎、コミュニティセンターなどの設計に携わりました。
若い頃は給与的にも勤務時間的にもハードな働き方をしていたと思いますが、勉強になりましたし、やりがいを感じられる仕事ができていたと思います。私生活では、妻と3歳の子供がいます。
今回の転職のきっかけは?
以前は「一生、首都圏で生きて行くのかな」と漠然と思っていました。ただ、子どもが生まれると、「子育てに理想的な環境とは」「そろそろ家を買わなければ」など、将来のことを現実的に考えるようになります。その結果、「別に一生東京にいなくてもいいのでは」と考えるようになりました。
子どもは自然豊かな環境で育てたいですし、この仕事をしている以上、自分で設計した家を建てたいという思いもあります。都心に家を建てるのは難しい、かといって都心から離れると通勤時間が大幅に増える―そんなことを考えると、「それは本当に幸せなのか?」という疑問が湧いてきました。
前職の仕事内容には満足していましたし、人間関係も良好だったので、そこを離れる決断に至るまでには結構悩みましたが、家族とも話し合って、東京を離れて妻の実家のある新潟に転職しようと決めました。新潟市は自然も豊かですし、中心部に行けば都会的な要素もあるので、バランスのとれた生活ができる環境だと思いました。私の父は転勤族だったので、私自身何回も引っ越しをした経験から「住めば都」という考えがあり、Iターンという選択に特に抵抗はありませんでした。
転職活動はどのように進めましたか?
まずは、大手の転職サイトに登録し、「新潟市」「建築設計」という二つの条件で求人情報を探しました。しかし、出てくる求人情報のほとんどが、東京に本社を置く企業の新潟支社勤務という募集ばかり。新潟に住むのが目的の転職なので、転勤のリスクは減らしたいと思っていろいろ探していたところ、新潟を拠点とする転職エージェントのサイトを見つけ、リージョナルキャリア新潟をはじめ3社に登録しました。
各社から求人をいくつか紹介していただいたのですが、給与条件が想像以上に厳しかった。地方へ行けば年収が下がるのはわかっていましたが、正直に言って「こんなに下がるのか」と思いました。そうなると、新潟に行っても苦しくなるだけではないか、Iターン転職は諦めようか、という気持ちになったこともありました。
CSコーポレイションは、最初に別のエージェントから紹介があったのですが、ホームページを見ると内装がメインの印象だったので、応募しませんでした。しかし、その後リージョナルキャリア新潟からも紹介され、建築もやっているという話を聞き、検討対象になりました。
今の会社に決めた理由は?
リージョナルキャリア新潟の提案を受けてあらためて検討すると、業務内容に建築設計も含まれており、しかも、施工も手がけている。つまり、作る現場を身近に見ることができるということです。これまで勤めた建築事務所は設計だけだったので、幅広い視野で建築を見られるのではないかと俄然興味が増しました。また、給与条件を諦めなくていいことも魅力的でした。
リージョナルキャリア新潟の担当の方に「仕事がハードなのでは?」と聞くと、「近年は働き方改革が進んでいて、職場環境が改善されているようです」という答え。さらに、「出る杭は打たない社風」と聞き、さまざまなことにチャレンジできそうだと魅力を感じ、受けてみることにしました。土曜日に面接を設定していただいたのがありがたかったですね。
面接では自分の実績だけでなく、「こういう仕事もできます」というアピールもしたところ、感触はとても良かったです。CSコーポレイションは商業施設の建築設計が主で、官公庁関係の仕事は手掛けていないのですが、「官公庁の設計の経験があるなら、ここでもやってみては?」と言っていただきました。柔軟に新しいことにチャレンジできる環境があるのだと確信し、ここなら自分のやってきたことを活かしつつ、したい仕事ができると感じました。また、社員の人柄や明るい社風にも魅力を感じました。
職場環境に馴染み、仲間と切磋琢磨。新しい仕事の提案も
転職してから今までを振り返っていかがですか?
2017年8月末に入社し、3カ月の試用期間を経て正社員になりました。もう正式な社員なので、「まだ5ヶ月」ではなく「もう5カ月」という意識で仕事に臨むようにしています。正社員になった時、「もう提案してもいいだろう」と思い、官公庁の仕事の提案書を作って会議に出したところ「やっていいよ」と(笑)。本格的に動くのはこれからですし、仕事が取れるかどうかはわかりませんが、「やっていいよ」と言われたのが嬉しかったですし、頑張ってみようと思っています。
転職によるプライベートの変化はありましたか?
東京では電車が主な移動手段でしたので、車生活になったことは大きな変化です。引っ越してから今まで、新潟では一度も電車に乗ったことがありません。東京では満員電車で1時間あまりかけて通勤していましたが、今はラッシュもなく、車で片道15分です。
東京時代は、帰宅すると子どもはとっくに寝ていましたが、今は帰ってから一緒にご飯を食べ、ちょっと遊ぶ。平日にプライベートの時間を確保できる生活は、本当にいいものです。休日の過ごし方も変わりました。海でも山でも繁華街でも、車で15分もあればどこへでも行ける。求めていたバランスのいい住環境は、想像以上です。
転職してから、今後の課題だと思うことはありますか?
実は、今回の転職にあたってもっとも心配していたのは、「新しい職場環境に適応できるだろうか」ということでした。私はIターンなので、こちらに友達がいるわけでもなく、職場の人間関係がうまくいかないと、精神的にきついだろうと心配していたのです。ですが、実際に行ってみると、まったくの杞憂でした。
今後の課題は、今の会社の仕事の進め方にもっと慣れること。店舗設計は、業務の進め方が官公庁のそれとは少し違うのです。大きな支障になるわけではないのですが、進め方を勉強して早くマスターしたいと思います。
生活面では、雪に慣れることでしょうか。通勤に時間がかかることは予想していましたが、雪かきや車のフロントガラスが凍結した時の対応に時間を割かれるのは想定外でした(笑)。車の運転には慣れてきましたが、まだ少し不安ですね。それから、車通勤になって運動不足気味なので、春から秋は自転車通勤に切り替えるなど対策を考えないとまずいと思っているところです。
今の会社に転職して良かったと思うことは?
いくつかあるのですが、一つはスキルアップの機会が定期的に設けられていること。設計部のメンバーで勉強会を開いたり、他社が手がけた建築や内装を見学する視察会に出かけたりします。視察会の後には意見交換会という名の飲み会もついてきます(笑)。さまざまな形で勉強をして、切磋琢磨しながらレベルアップしていこうという職場の雰囲気がいいですね。
また、社員旅行やバーベキューなどの社内イベントもあるようなので楽しみにしています。普段は接する機会のない他部署の人たちと交流できますし、そういった積み重ねが会社の明るい雰囲気につながっているのかなと思いますね。
地方への転職を考えている人にアドバイスをお願いします。
まずは今の仕事を辞めずに、在職のまま転職活動をすることをおすすめします。なぜなら、地方都市はどうしても求人数が少ないので、「辞めた、探した、すぐ決まった」とはなかなかならない。ですから、働きながら情報収集をした方がいいと思います。
情報収集の方法としては、私が今回使ったような、地域に特化した転職支援会社や転職サイトを利用する方がいいように思います。地元企業の情報をたくさん持っているのは、やはり地域の企業だと実感しました。