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「総合エンジニアリング商社」として、ものづくりを最前線で支え続けたい。

株式会社シマキュウホールディングス
代表取締役社長 島田 隆昭

更新日:2025年11月12日

新潟県生まれ。
1981年 キヤノン株式会社入社。
1986年 株式会社シマキュウ入社。
2000年 株式会社シマキュウ 代表取締役社長就任。
2019年 株式会社シマキュウホールディングス 代表取締役社長就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

会社の危機を乗り越えるため、地元に戻り家業を継ぐことを決断。

シマキュウは1936年に創業し、80年以上にわたって新潟・東北エリアにおいてガスおよび産業機材の専門商社として事業を行ってきた会社です。私の父が1977年に事業を承継して代表となりました。

父が社長であることはもちろん知っていましたが、私はシマキュウの仕事内容をそれほど知らず、父からも「会社を継いでほしい」という話は一切なかったため、学生時代は自分が会社を継ぐことは考えたことがありませんでした。

私は高校卒業までの18年間を生まれ故郷の新潟県長岡市で過ごしたのち、東京の大学に進学してキヤノンに入社しました。

キヤノンに入ったのは、世界を飛び回るような仕事がしたいと考えたからです。地元を離れて都会で働き、世界を見据えたキャリアを築きたいと思っていました。

キヤノンの仕事は非常にやりがいがあり、順調に経験を積み重ねていた入社6年目に、父が突然の病で倒れました。当時のシマキュウは父の存在が大きく、社長不在は会社の存続にも関わる危機的状況でした。

在籍社員は100名ほど、売上規模は40億円という会社でしたから、事業に関わる人々のためにも経営を引き継ぐ人材が必要となり、私に「すぐ戻ってきてほしい」と声がかかりました。

非常に悩みましたが、これも運命だと受け入れて家業へ入ることを決めました。

現場のIT改革で家業に新たな風を吹き込み、信頼を築いた。

28歳のときに新潟に戻り、まずは管理部長としてシマキュウへ入りました。前職のキヤノンとは仕事の進め方が大きく異なり、最初はそのギャップに戸惑いました。

しかも父の世代に近い役員や部長が現役で現場を回していたので、ゆくゆくは経営者になる身として、その中でなんとか実力を認めてもらう必要がありました。

そこで「自分の得意分野であり、現場の先輩たちに勝てるものは何だろう」と考えた結果、コンピューター関係の仕事を一手に担うことにしました。

私は大学時代にコンピューターを専攻しており、キヤノンの業務でも扱う場面が多かったため、まずは会社の事務作業から見直していこうと決めました。

当時の事務部門にはコンピューターに近いものはありましたが、請求書の印刷といった限られた用途でしか使えず、データを蓄積する機能を備えていませんでした。

過去のデータを見られるようにデータベースを作り、一人一台ずつ端末を支給し、インターネットを導入して他の営業所とスムーズにやりとりできる環境を整えていきました。

もちろん、すべての業務が瞬く間に変わったわけではありません。時間をかけて徐々にコンピューターに対するメリットを感じる社員が増え始め、その変化が浸透することで現場が自分に信頼を寄せてくれるようになってきました。

公正な人事評価基準を整備し、社員の成長を後押しする会社へ。

シマキュウに入ってからもう一つ取り組んだこととして、人事評価基準の明確化があります。父の時代は創業当時からの個人商店のような雰囲気が残っており、父の采配で会社の進む先が決まることも多い状況でした。

しかし、社員100名以上の規模へと拡大するに従い、その体制に限界が訪れつつありました。会社全体の目標に加えて、部門別の目標や個人目標の設定、そして売上・粗利・回収率などをすべて数値化したうえで社員を評価する制度を再構築しました。

従来はどうすれば評価されるのかが曖昧だったところを、しっかりと仕組みを作って会社を一本化することで、社内の方向性が一つになっていきました。

さらに同時進行で新潟のガス会社が多数加盟する業界団体に入り、人脈を広げました。これは父の教えによるもので、「業界内に強いパイプを作りながら、広い視野でビジネスを見なければならない」といつも言っていました。

40代に入った頃には新潟の業界団体の会長職を拝命し、全国の会合に参加して「新潟のガスといえばシマキュウ」というイメージを広めることに奔走しました。

いろいろな人から声をかけていただき、全国各地で仲間を得られたことは現在に至るまでビジネスの強化につながっています。

成長型M&Aで事業領域を超えて進化するシマキュウグループ。

シマキュウは近年、異業種を含むM&Aを積極的に進め、新潟県内だけでなく埼玉・栃木・長野・群馬といった他地域の企業とも資本提携を結んでいます。

20年ほど前から同業のガス会社を中心に合併や買収を行ってきましたが、それだけではビジネスの広がりが限定的になると感じ、成長型のM&Aを目指して従来の事業領域にとらわれない資本提携へと舵を切った経緯があります。

そして2019年10月には、シマキュウグループ7社の持株会社として株式会社シマキュウホールディングスを設立し、産業資材全般を取り扱う「総合エンジニアリング商社」に向けた新たなスタートを切りました。

最初に異業種でM&Aを実施したのが、グループ会社である株式会社トウヨーネジです。埼玉に本社があるネジ類の専門商社で、ガスや溶接材料などを使用する顧客を多く保有しており、当社のビジネスと相性が良いことがM&Aの決め手となりました。

「後継者がいない」「グループ会社に入り、安定的な経営を目指したい」など、買収・提携に至る背景はそれぞれ異なりますが、シマキュウグループではこれまでトウヨーネジを含む15社を傘下に迎え入れました。

グループ会社間で互いの商材を売り合う「クロスセル」という営業手法で、それぞれの会社の持ち味を活かして相乗効果を生みながら、その先にいる取引先やお客さまに対して高い価値を提供できる事業推進体制を構築しています。

求めるのは「地域のものづくりを進化させ、未来へ導く人材」。

シマキュウグループが求める人材は、仕事に前向きな方や、広い視野で業務を捉えることができる方です。今後シマキュウは地域の特性を活かしつつ、M&Aなどを通して商材を増やし、クロスセルを生み出す戦略を取っていきます。

その中では、あらかじめ持っている知識というよりも、行動力や積極性などの人間力が重要となるでしょう。知識は会社に入ってからいくらでもキャッチアップできますから、学部や前職の経験などにはそれほどこだわらず、とにかく自ら進んでいく方を求めています。

加えて、今後はAI搭載のコンピューターやロボットがメイン商材となる時代を迎えます。これまで当社の主要顧客であった溶接業界も溶接工の人手不足が深刻化しており、ロボットへの置き換えが予想されます。それらの技術とセットで商材を提案しなければビジネスが成り立たない可能性もあるでしょう。

当社は現在、溶接ロボットなどを展示できるショールームの建設を進めています。社員の研修施設として活用したり、お客さま向けの展示会などを行いつつ、世界各国の製造現場向けロボットを拡販するビジネスの構想を描いている最中です。

そんな未来を実現してくれる、コンピューター・ロボット・AIの知識を有した人材、もしくは機械や電気に興味がある人材も必要です。地域のものづくりの未来を支える会社で、新しい挑戦をしてみたいと考える方を積極的に採用したいですね。

幅広い事業領域を持つからこそ、成長の可能性も無限にある。

ホールディングス体制となり、「総合エンジニアリング商社」としての動きを加速する当グループは、2025年9月期連結売上高にて過去最高の215億円を達成しました。

しかし、各事業分野はまだまだ成長の余地があります。

私たちのような商社が売上を伸ばすには、他地域に進出するか、新たな商材を得て売上を伸ばすのが王道の方法です。ただ、伝手のない土地に行っても相手にされないリスクがあり、新しい商品を扱う際もノウハウがなければ成功しないでしょう。

そこで、当グループはM&Aにおける地域戦略・商品戦略によってビジネス拡大を図っています。

地域戦略では、新潟以外の地域に根ざした会社をグループに迎え、その先にいるお客さまとパイプを持ち、人口減少に負けない販路を築く意図があります。

商品戦略では、当社がこれまで主軸としてきたガス・溶接業界と関連の深い商材を増やし、クロスセルによって幅広い商品の提案ができる組織体制と東日本の広い範囲で商品供給網を作ります。

加えて、今後はAI・ロボットといった新分野への挑戦も行います。そのうえでは人材の力が欠かせません。

半導体などのハイテク分野はもちろん、建設・機械・食品・医療・化学といった幅広い分野で使用される当社の商品は地域のものづくりを支える存在です。

日本の産業を支えたい、ものづくり業界に貢献したいと考える方は、ぜひ当グループを育てる仲間の一員になってほしいと思います。

編集後記

コンサルタント
中村 麻優

長岡市では、いたるところでシマキュウ社の看板を目にします。まさに地域で愛され、長岡を代表する企業だと感じますが、それは島田社長が「人」と「お客さまからの信頼関係」を大切にしてこられたからこそだと気づきました。

地域に根差しながらも早くから全国へと視野を広げ、「ネット通販できない、シマキュウからしか買えない」商品を取り揃える戦略は、時代に合わせて拡大してきた同社らしい戦略であり、地域企業の新たな可能性を感じました。

挑戦と進化・発展を続けていくことで日本のものづくり産業を支える同社を今後もご支援し続けたいと思います。

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