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人材を手段ではなく目的とする会社へ。

株式会社タケショー
代表取締役社長 田中 利直

更新日:2024年11月06日

新潟県新潟市生まれ。東京大学卒業。
1984年 マッキンゼー・アンド・カンパニー ジャパン入社。
1989年 米国コロンビア大学大学院入学。国際関係学(SIPA)修了。
1991年 株式会社日本興業銀行(現:株式会社みずほ銀行)入行。
1999年 父の経営する株式会社タケショーに入社。
2001年 代表取締役社長就任。
※所属や役職、記事内の内容は取材時点のものです。

歴史学と国際関係学が価値観のベースに。

株式会社タケショーは、1960年の創業以来、新潟県を拠点とした食品卸として歩んできました。

私自身は1959年に新潟市で生まれ、この地で育ちました。進学先の東京の大学では歴史学と国際関係論を専攻し、学者の道を志した時期もありました。結果的には就職する道を選びましたが、大学時代に得た価値観・人間観が、現在の事業形態や企業理念につながったと今では考えています。

大学卒業後は外資系経営コンサルティング会社に入社し、5年間勤務しました。その期間は非常にハードでしたが、戦略的思考や課題設定・問題解決を徹底的に鍛えられました。その後、1989年という東西冷戦構造が大きく変わる節目に米国の大学院に留学し、国際関係学を学びます。

修了後は日本興業銀行で日本のエネルギー調達に関わるプロジェクトファイナンス部門を中心に7年間勤務し、広い視野で事業金融、あるいは事業そのものを捉える視点を養いました。そして1998年の金融危機を経た翌年、父が経営する株式会社タケショーに入社することとなりました。

幼いころから休日を返上して顧客や社員のために走り回る父の背中を見てきたものの、会社を継ぐことはそれまで考えたことがありませんでした。まったく異なる世界に飛び込むことに多少の不安はありましたが、「自分自身の考えを企業経営という形で表現できる」という希望に燃えてのスタートだったと記憶しています。

2001年には代表取締役社長に就任し、現在に至ります。当初は自分の考えを一方的に押しつけようとして社員から反発されるなど、失敗の連続でした。しかし、5年、10年と苦楽を共にするうちに、徐々にお互いに心が通じ合うようになってきたと感じています。

卸売、ブレンド、食品素材の3事業を結びつけた独自のビジネスモデルを構築。

当社は「食品開発支援企業」という事業体をめざして、従来の卸売という業態にとらわれない新しい挑戦を重ねてきました。現在は、加工食品開発および製造に必要な原材料や包装資材・機械設備の仕入販売、食品メーカー向けのブレンド・シーズニングの設計開発と製造に加えて、ブレンドに使用する原料素材そのものの開発と製造を行っています。

また、大学・研究施設向けの理化学機器・試薬の仕入販売も手がけることで、研究者や専門家との緊密なネットワークを構築しています。当社の強みは「卸売」「ブレンド」「食品素材」という三つの事業を有機的に結びつけた独自のビジネスモデルにあります。このモデルにより、市場の変化に柔軟に対応し、持続可能な成長を実現することが可能になりました。

さらに、約800社の原材料メーカーとの取引による豊富な情報力に加えて、自社の開発機能と製造機能も有していることで、商社でありながらメーカーの顔も持ち合わせるというユニークなスタイルを確立できました。

こうした特徴を活かし、当社の三つの事業領域に、さらにエンジニアリング機能を加えることで、お客さまの成長発展を多面的・総合的にサポートしています。私たちは単なるサプライヤーとしてではなく、お客さまのビジネスパートナーとして、共に成長していくことを目指しています。

「おいしさを科学する」取り組みを中核に据えて、産学連携で研究開発に挑む。

当社では、「おいしさを科学する」という取り組みを中核に据えて、研究開発にも力を入れています。東京大学農学部の阿部啓子教授にご指導いただき、共同での学術論文や学会発表に加えて、この分野で国内外の複数の大学との共同研究を立ち上げています。

こうした共同研究の成果として、味の設計開発やシーズニングの提案という実際のビジネスにおいて学術的なアプローチを採用することで、お客さまに対してより説得力のある高度なサポートを提供できるようになっています。

そして、何よりこのプロセスに関わることで、社員一人ひとりの専門性が高まり、「人材の成長」にも大きく寄与しています。

独自ビジネスモデルをベトナムでも展開。

私たちは現在、国内のビジネスモデルを海外で応用する取り組みを進めています。2018年より、ベトナム南部のカントー市に進出し、メコンデルタの食資源を有効活用するために、カントー大学と共同研究を続けています。ベトナムでは日本とは逆の順序で三つの事業を展開していこうと考えています。

具体的には、最初に共同研究をベースに原料素材開発から始め、現在はブレンド事業が立ち上がっています。今後は卸売事業も本格的に展開させることで、日本と同様の三つの事業を連動させた事業モデルへと進化させていく予定です。

ちなみに、ベトナムは私が学生時代、さらには銀行で働いていた当時からずっと関心を持ち続けていた国でした。いつかこの国で事業を行ってベトナムの人たちに貢献したいと思っていたため、今こうしてベトナムで仕事ができることに大きな喜びを感じています。

当社の企業理念の第一項目に、「社会から必要とされ、人々から共感され、そして世の中をよりよくする会社を目指します」とあります。当社が100%出資しているタケショーフードベトナムの事業ミッションは、この理念を受けて、「メコンデルタの食資源の高付加価値化と、メコンデルタの食品企業の競争力強化を通じて、メコンデルタの持続的発展に貢献する」としています。

2024年より、カントー大学、新潟大学、そして当社の3者で、「おいしさを科学する」をテーマに共同研究を立ち上げる運びとなりました。日本人と同様、繊細な味覚、嗜好性、感性を持ち、多彩な食文化を持つベトナム人と、味の感じ方や好みの類似性や違いを明らかにし、食品開発に活かせる知見を得たいと考えています。

「社員の成長を目的とする」企業文化。

私が事業において最も重視しているのは「人の成長」です。ここでいう成長とは、企業にとって好都合な「稼げる人材になる」という意味ではなく、自分自身や周りの人たちを幸福にしていけるような「人としての成長」「全人格的成長」を意味しています。

企業が事業の成長や高収益化を最終目的としてしまうと、そこで働く社員は、そのための「手段」ということになり、そこから人間性の疎外や心の豊かさの欠如といった問題が生じやすくなります。当社は、「人としての成長」を企業目的とし、日々の仕事を通じて社員一人ひとりが成長していける会社を目指しています。

当社の「食の花束」の理念では、社員一人ひとりをかけがえのない「花の一輪」と見立て、お互いの成長を支援し合い、お互いに尊重し協力し合って「食の花束」を創り、お客さまや社会にお届けすることで、明るく豊かで幸せになる会社を目指していくことを大切にしています。

最近では、私たちのこのような理念に賛同した人たちが当社に集まってきてくれています。中には東京の大企業と比較したうえで、新潟にある当社をわざわざ選んで入社してくれるケースもあり、心強く感じているところです。これもまた、一度しかない人生において、自分の幸せや働くことの意味を考える人が増えているからではないでしょうか。

大きな組織での仕事を経験し、「自分自身の幸福」や「働くことの意味」をもう一度深く考えたいという方にも、ぜひ当社の「食の花束」の理念に関心を持っていただけたらと考えています。

編集後記

コンサルタント
五十嵐 卓

食品分野で一貫して顧客に「食の花束」を届けているタケショー社は、独自のビジネスモデルとネットワークをさらに発展させて、持続可能な事業モデルをもとに海外への進出を果たしています。社長自らが描く今後の展開と、それを熱く語る姿勢が、人を引き付ける同社の魅力のひとつなのだと感じました。

「会社の存在意義は事業の成長ありきではなく、従業員の幸せや成長の場を提供することにある」と力強く言い切る田中社長。国内から海外への事業展開、新業態へのチャレンジ、それに伴う社員の成長が企業発展の源泉であると感じました。

世界的にも多くの課題がある「食」の分野ですが、その革新者としてのご活躍を応援していきたいと思います。

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