デュポンが掲げる理念のもと、笹神工場の価値を高めていく。
デュポン・パフォーマンス・プロダクツ・ジャパン株式会社(旧社名:ローム・アンド・ハース電子材料株式会社)
ST Litho プロダクションリーダー 窪田 靖彦
1982年 群馬県生まれ。
2011年 デュポン・パフォーマンス・プロダクツ・ジャパン株式会社(旧:ローム・アンド・ハース電子材料株式会社)入社、生産技術部門を担当。
2019年 製造部門リーダー
2021年 製造部門・品質管理部門リーダー
※所属・役職等は取材時点のものとなります。
新潟平野の端、森と水田に囲まれた地に建つ外資系工場
デュポン・パフォーマンス・プロダクツ・ジャパン株式会社は、アメリカで1802年に創業して220年の歴史を持つデュポン社のグループ会社です。半導体やプリント回路基板を製造する過程で使用される化学薬品が、我々の製造品目です。
例を挙げると、半導体を微細加工する際に用いる感光性樹脂(フォトレジスト)や、基盤をメッキする薬品などです。これらは製造過程で使用される薬品なので、出来上がった半導体やプリント回路基板に当社の製品の姿は残っていませんが、それらを製造するためには絶対に欠かせないのが当社の電子材料です。
今や半導体やプリント回路基板は、スマートフォンをはじめ、あらゆる電化製品で使用されています。当社の製品は各国に輸出されていて、世界中のエレクトロニクス産業を支えています。
新潟県阿賀野市にある笹神工場はその製造拠点で、セミコンダクター・テクノロジーズのリソグラフィ(STリソ)と、インターコネクト・ソリューションズ(ICS)という、二つの事業部があります。STリソは有機溶剤を使った油性の材料を、ICSは水系のメッキ関連製品を生産しています。製造部門のほか、研究開発、営業、品質保証部門もあり、さまざまな部門が複合した工場になっています。
半導体需要の高まりを受けて生産力を増強中
私自身は2011年に外資系企業からの転職で入社しました。入社して7年ほどは、工場設備の設計や導入といった生産技術部門を担当しました。2019年から製造に移り、現在は製造部門と品質管理部門のリーダーを務めています。
STリソで製造している製品は、スマートフォンなどに使われている半導体チップの製造過程において使用される薬剤です。近年の半導体需要の高まりのなか、その製造に不可欠な材料であることから生産量を順調に伸ばしています。STリソの工場は週7日間稼働しています。これから夜間の稼働も増やす計画で、それに伴って人員増強を進めているところです。
私が製造に移って感じたのは、ここで10年、20年と長く働いている人たちが、とても頼りになるということですね。私たちの製品はお客さまによって少しずつ処方が違っていたり、仕様が異なったりしているので、非常に種類が多く、おそらく100種類以上はあります。そのため、製造の際には班のメンバー同士ですり合わせをしながら進める必要があります。
細かいノウハウがある工場なので、経験と知識の積み重ねが非常に大切です。それもあって、これから笹神工場の今後10年、20年を支えていってくれる人が入社してきて、一緒に働いてくれたら嬉しいなという思いがあります。
企業理念を愚直に貫く。根底にある精神は日本企業と似ている
当社は最初から外資で始まった会社ですが、よく外資系企業というワードから連想されるイメージとは少し違う風土を持っていると思います。企業理念である「安全と健康」「最高の倫理行動」「人の尊重」「地球環境の保護」という4つのコア・バリューを経営の根幹に位置づけています。至極当たり前のことなのですが、デュポンはこのコア・バリューに対して非常に愚直に取り組む姿勢が特徴だと思います。
デュポン社の社員と話をすると、自分のキャリアだけを追い求めるというより、社員みんなの幸せを大事に考えていて、日本的な考え方をするんだなと感じたことがあります。本拠地であるアメリカでは3世代にわたってデュポンに勤めているという人もいて、社員は会社への忠誠心を持ち、会社はそういう社員に報いなければという形で組織運営をしている部分も大きい。世の中の人が抱く外資系会社のイメージと、日本企業がミックスされたような会社なのかなと感じています。
コア・バリューについて愚直に取り組むという意味では、毎年1回、全従業員を対象に企業理念への理解を深めるトレーニングを行っていて、その年ごとに例えば「人の尊重」という部分で、アンガーマネジメントや、多様性をテーマに学ぶ、といった時間を設けています。
以前、私が担当している生産ラインで従業員がケガをする事案が発生したとき、こうした教育が社員に浸透していると感じたことがありました。事故を受けて、上層部からはすぐに「工場を止めて、確実に安全に再開できるまでは動かしてはいけない」と指示がきました。それに従って4日間かけて措置をして、同じことが二度と起きないことを確認した上で再開となりましたが、当然、製造や製品出荷に影響が出るので、特に営業は大変だったと思います。
しかし、文句を言ってくる人は誰もいませんでしたし、他の部門も「安全が第一。実際に作業をする人たちの気持ちが大事だよね」と対応してくれました。会社として大事にしていることを表向きだけでなく、すべてにおいて貫いている姿勢は、ここで働いていることに誇りを感じられる部分だと思います。
一人ひとりが自分のキャリアに向き合い、リーダーがそれを支える
一方で外資系の多くがそうであるように、当社には年功序列や、画一的なキャリアパスは存在しません。自分のキャリアに対して一番大事なのは、社員一人ひとりが10年後、20年後、自分はどうなっていたいかをきちんと考えて、上司とコミュニケーションしていくことです。
私も毎年、キャリアに関するディスカッションを部下全員と実施していますが、本人が仕事に対してどう考えているかを大切にしています。本人の興味の方向や仕事の成果と、組織のニーズが合えば立場も変わっていくと思います。
もちろん希望が100%通るわけではないですし、私自身のキャリアを振り返っても、希望が叶わなかったことが多々ありました。しかし、「こうなりたい」ということを言い続けることが大事で、最初はそれを考えることからだと思います。
入社したばかりの頃は即答できないでしょうが、この会社はそういうことを聞かれたり、話し合ったりする場が多いので、必然的に考え続けることになります。そして、だんだんと人生設計や自分が求めていることの形が見えてきます。それが確固たるものになったとき、チャンスがやってくるのだと思います。
デュポンは日本国内だけでも合弁会社も含めて何拠点もあり、海外出身の社員も増えています。当社にも中国、タイ、インドネシア、韓国、台湾などの出身者がいて、なかには当社から母国のデュポンに移った人もいます。こうした面はグローバル企業としての魅力だと思います。
その一方で、先ほども話したように、製造現場においては長く働き続ける生き字引のような人材も絶対に必要です。社歴の長い社員と話をすると、これまで半導体業界は紆余曲折あっただけに、本当に逞しいんです。みなさんが笹神工場の価値をどう残していくか、ということに向き合いながらここまで歩んで来たんだなと感じますね。
地域の人々に当社をもっと知ってもらうために
人材採用を考えたとき、当社の課題は知名度。形として残らない製品であるために、一般には当社の製品や会社のことが伝わりにくいんです。それは自覚しているので、当社のことを地域の皆さんに知ってもらうためにも、私たちにできることで地域貢献していこうと、さまざまな取り組みを行っています。
工場から10kmほど離れた場所にある福島潟はさまざまな野鳥が飛来し、豊かな生態系が育まれている貴重な湿地です。工場から出る処理後排水はここに流れ込み、最終的に日本海へと流れていくので、私たちには福島潟の環境保全に責任がある。そう考えて、福島潟を守るNPOに寄付を行い、新潟市北区主催の福島潟クリーンウォークに社員が家族と共に毎回参加しています。
また、地元の中学校の吹奏楽部に管楽器を贈る取り組みも続けています。自宅で余っている食品を持ち寄って自治体が行っているフードバンクに寄付する活動は、笹神工場の実施例を見て、他の工場でも取り組みが始まっています。
最近では、女性社員の発案で、サイズアウトした子ども服をまず社員間でゆずりあい、残った服は発展途上国の子どもたちにポリオワクチンを贈るプロジェクトに寄付をするという取り組みも行いました。「正しいことをしよう」という会社のスタンスのもと、良いことは積極的に行っていく姿勢ですし、行う際には社員が参加しやすい工夫をして取り組んでいます。
笹神工場はいま成長のとき。共に頑張ってくれる人に出会いたい
笹神工場は、今は特に半導体の需要が高まっているので、入社した場合、おそらく仕事は忙しいです。みんなで頑張っているところで、私を含め経営層にできるのはその頑張りを給与面に反映させることや、チャレンジする機会を提供することですね。
外資系企業の良いところは、変化を恐れないという部分。長い歴史のなかで、創業時のビジネスはもう止めていたり、注力する部分をダイナミックに変化させたりしています。
当社の電子材料事業は、幸運なことに今伸びている時期で、会社側も「必要なサポートはするから、いま大きく成長していこう」というスタンスです。その達成を一緒に目指してくれる人に出会いたいですし、臆することなく、笹神工場で自分の力を発揮してくれる人が、一人でも多く来てくれることに期待しています。